【第5回/最終回】AI時代、企業は「何を内製」し「何をプロに任せる」べきか?成果を出すためのCMS運用体制

【第5回/最終回】AI時代、企業は「何を内製」し「何をプロに任せる」べきか?成果を出すためのCMS運用体制
―― 「AI止まり」を突破する!企業Webサイトの生成AI・実務実装ガイド 最終回 ―― 「AI止まり」を突破する!
企業Webサイトの生成AI・実務実装ガイド
最終回

AI時代、企業は「何を内製」し「何をプロに任せる」べきか?成果を出すためのCMS運用体制

対象:Webサイト運用担当者・マーケティング責任者・経営層 テーマ:内製化の罠 / 責任分解点 / CMSガバナンス / Web担当者のキャリア / シリーズ総括 目的:「AIによる完全内製化」の危険性を理解し、社内とプロの最適な責任分解点を構築する

AIを使えばブログ記事も書けるし、コードも生成できる。もう高い保守費用を払って制作会社に頼まなくても、自分たち(内製)で全部できるんじゃないか?
生成AIの普及以降、経営層やマネージャーからこんな言葉を投げかけられ、プレッシャーを感じているWeb担当者は少なくありません。

結論から言います。「AIツールを入れたから外注費をゼロにできる」という考えは、企業Webサイトを崩壊に導く最も危険な幻想です。

AIは「作業(コードを書く、文章をまとめる)」を数秒で代行してくれますが、「そのコードが自社のサーバー環境で安全か」「その文章がブランドを毀損しないか」という「責任と品質保証」までは絶対に担ってくれません。これを非エンジニアの社内担当者にすべて背負わせる完全内製化は、いずれ致命的な事故を引き起こします。

全5回でお届けしてきた連載の最終回となる今回は、AI時代の企業Webサイト運用において、「企業が自社でやるべきコア業務」と「プロの知見を頼るべきリスク管理業務」の責任分解点(境界線)を定義し、成果を出し続けるための組織体制と、これからのWeb担当者の真の価値について深く掘り下げます。

「AIで完全内製化」した企業が数年後に支払う莫大なツケ

「AIに任せてコストを削減した」と喜ぶ経営層の裏で、現場のCMS(WordPressなど)の内部はどのような惨状になっているでしょうか。我々プロの保守会社が現場で直面する、リアルな「技術的負債」の実態をお伝えします。

「AI完全内製化」の「技術的負債」の実態イメージ

誰も触れない「呪いのコード」の蓄積
担当者がAIに出力させた「動くけど意味不明なコード」がテーマファイル(functions.phpなど)に蓄積。その担当者が退職した瞬間、「どこを触ればサイトが直るのか誰にも分からない」完全なブラックボックスに陥ります。
コアアップデート時の「サイト突然死」
WordPressのメジャーアップデートやサーバーのPHPバージョンアップが行われた際、AIが書いた非推奨な古い関数のコードが原因で、ある日突然サイトが真っ白になり(エラーダウン)、復旧できなくなります。
コモディティ化による「透明人間化」
「コスト削減」を至上命題にAIへ記事を量産させた結果、Googleから「どこかで見たような独自性のないサイト」と判定され、検索順位が暴落。ゼロクリックサーチの波に飲まれ、Web上での存在感を完全に失います。

数万円の保守費用をケチって完全内製化した結果、数年後に「サイトが直せないので数百万円かけてフルリニューアル(作り直し)するしかない」「情報漏洩で損害賠償が発生した」という莫大なツケを支払う企業が後を絶ちません。

プロが引く「内製」と「外部パートナー」の明確な責任分解点

企業はWeb運用をどのように切り分けるべきでしょうか。AI時代において、内製と外注の境界線は「作業ができる/できない」ではなく、「事業の独自性を作るコア業務か、リスクを遮断するインフラ業務か」という『責任分解点』へとシフトしています。

✅ 企業が「内製(自社)」でやるべきコア領域

AIにも、外部の制作会社にも絶対に作れない「自社の血肉」となる部分に、人間のリソース(浮いた時間)を全集中させます。

社内政治を乗り越えた「一次情報」の獲得 E-E-A-Tの源泉は現場にある

営業の商談メモ、カスタマーサポートに寄せられた生々しいクレームと解決策、技術者の失敗談。これら「自社にしかない一次情報」を他部署からかき集め、説得してコンテンツ化する作業は、社内の人間にしかできません。AIはそれを「整える」だけです。

業務フローの整備と「要件定義」 丸投げをやめ、AIで壁打ちする

「こんな機能が欲しい」という要件を、AIを使って大まかなプロトタイプ(たたき台)に落とし込むまでは社内で行います。これにより、制作会社へ「何を実現したいか」を正確に翻訳して伝えることができ、開発のズレやコストを大幅に削減できます。

🛡 AI時代でも「プロの知見」を頼るべきリスク管理領域

万が一事故(情報漏洩やサイトダウン)が起きた際の損害が甚大すぎるため、ここは自社で責任を背負わず、外部のプロに責任を担保させる(リスクを切り離す)のが賢い経営判断です。

セキュリティの担保と本番マージ(安全な反映) 事故を防ぐ最終防衛線

AIが書いたコードのサニタイズ漏れ(XSS等)チェック、個人情報に関わる改修、そして「バージョン管理のもとでの本番環境への安全な反映とバックアップ」は、事業リスクを遮断するためにプロのエンジニアに任せるべき領域です。

CMSの構造化設計とデータクレンジング AIを賢くするための基盤設計

将来的にAIチャットボット(RAG)や検索エンジンが情報を正確に抽出できるよう、CMSのカスタムフィールドをどう分割するか、JSON-LDをどう出力するかといった「情報アーキテクチャ(IA)の設計」は、専門的な知見が必要不可欠です。

AI時代のWeb担当者に求められる「真のスキル」とは?

「作業」の多くをAIがこなせるようになると、企業におけるWeb担当者の役割は激変します。これからの時代に評価される担当者は、「プロンプトを上手く書ける人」ではありません。

📌 「作業者」から「ディレクター・情報設計者」への進化

1. 組織のサイロ化を壊すコミュニケーション能力
AIに質の高いコンテンツを作らせるには、質の高いデータ(一次情報)が必要です。しかし、そのデータは営業部やサポート部など他部署に眠っています。部署間の壁を越えて「情報を出してもらう交渉力・巻き込み力」こそが、AI時代に最も重宝されるスキルです。

2. ビジネス要件をプロに翻訳する「ブリッジ能力」
自社が達成したいビジネスゴールを、AIツールや外部の制作会社(エンジニア)が実装可能な要件へと「翻訳」し、プロジェクトを推進するディレクション能力。これこそが、ツールでは決して代替できない人間の付加価値です。

AI時代のWeb担当者に求められる「真のスキル」イメージ

シリーズ総括:「AI止まり」を突破する企業になるために

全5回にわたって解説してきた本連載の結論として、企業が「AIを使っているだけの状態(AI止まり)」を抜け出し、実務で成果を出し続けるための哲学をまとめます。

① AIは「魔法の杖」ではなく、「泥臭い運用」を加速するエンジン

AIツールを導入しただけで売上が上がることはありません。現場へのインタビュー、データの整理、競合調査といった「泥臭いインプット作業」があって初めて、AIはその処理能力(エンジン)を発揮します。ハンドルを握るのは常に人間です。

② CMSをただの「箱」から「知の基盤(データベース)」へ育てる

Webサイトは「作って終わり」の時代から、AI時代の「自社専用データベース」へと役割が変わりました。情報が整理され、構造化され、常に最新に保たれたCMSこそが、SEO(検索エンジン)にもRAG(チャットボット)にも愛される最強の資産になります。

③ コスト削減ではなく、「人間への再投資」にAIを使う

AIで浮いた時間とコストを、「外注費のカット」で終わらせてはいけません。浮いたリソースを、「一次情報の獲得」や「顧客との対話」、「安全性を担保するプロの知見(保守体制)」へ再投資する企業だけが、競合を置き去りにして成長し続けます。

まとめ:AI時代に最も価値が高まるのは「人間同士の連携」

どれだけAIが進化し、高度な機能がコモディティ化(一般化)しても、企業のWebサイトを通じて最終的にコミュニケーションを取る相手は「人間(顧客)」です。

  • 「AIで完全内製化」は、数年後にブラックボックス化とセキュリティ事故を招く
  • 自社は「一次情報の獲得」と「要件定義」というコア業務に全力を注ぐ
  • 制作・保守会社には「セキュリティや情報設計の責任」を担保させる
  • Web担当者の価値は「プロンプトスキル」から「社内外を繋ぐディレクション力」へシフトする

「AIに何をやらせるか」よりも、「AIが効率化してくれた時間を使って、社内の部門間や社外のプロパートナーとどう連携を深め、自社にしか出せない独自の価値(ビジネス)を創り出すか」
これこそが、AI時代を勝ち抜く企業Webサイト運用の本質です。全5回の連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。

AI時代の「攻めと守りのCMS運用体制」を一緒に構築しませんか?

「担当者がAIで実装を進めているが、ブラックボックス化とセキュリティが不安だ」
「AIチャットボット導入を見据え、既存のWebサイトを構造化データとして再設計したい」
「自社で内製化する領域と、プロに任せる領域の切り分け(ルール作り)から相談したい」

株式会社ヒューコネクトでは、単なるWebサイトの制作・保守にとどまらず、貴社の「テクニカル・ガーディアン(技術的な番人)」として伴走します。
AIを活用してスピーディに施策を回したいWeb担当者様を支援しつつ、絶対に守るべきセキュリティとCMSのガバナンス(責任分解)を担保する、理想的なハイブリッド運用体制をご提案いたします。

Webサイトの運用体制・保守についてプロに相談する
監修者
矢野 俊幸
Toshiyuki Yano
代表取締役 Executive Producer|福岡オフィス
私は25年以上、企業のWebサイト制作・運営に携わってきました。Webサイトは企業の価値を映す大切な資産であり、継続的な改善の積み重ねが成果を生むと信じています。 当社では保守専任エンジニアが直接対応する体制を整え、責任あるサポートを徹底しています。同時に、専門的な内容であっても、できるだけ分かりやすくお伝えすることを大切にしてきました。 本コラムでは、経験豊富な制作者の方はもちろん、これからWeb運営に取り組む方にも寄り添いながら、本質を見極める視点と実務に活かせる知見を、情熱を持って発信してまいります。
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